2009年08月22日 (土)

今日のお題:助川海防城趾探訪(茨城県日立市)

幕末水戸藩の海防制作の一環として築かれた助川海防城趾に行って参りました。実際に海防のために使われたことはなく、元治内訌(天狗党の乱)の際に消失してしまったという何とも残念な結末なのであります。

太平洋戦争の節には、企業城下町の日立は日立製作所を中心に艦砲射撃や空爆がありましたが、さすがに役には立たなかったかと。
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本丸跡(石垣は後年の新築とのこと)全体図
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海:海岸線に沿って陣屋などもあったらしいです。尊王攘夷碑:やはり尊皇ではなく尊王であるべきなのです

2009年08月11日 (火)

今日のお題:「帝国」日本から「大日本帝国」へ(「二〇世紀と日本」研究会、二〇〇九年八月八日・於ホテルグランヴィア和歌山)

$FILE1_l 梅雨が明けなかった東北人にとっては絶望的なほどの快晴でございます。なんなんだ、関西(新大阪にて)

さて、今回は「20世紀と日本」ということで、「大日本帝国天皇」が1936年に誕生することからはじまってみました。

江川芳光ほか二名「国号の称呼使用に関する請願書」一九二六年三月一六日
「我が帝国の国号は、我が帝国憲法に於て、天皇の大権に基ける栄典の勲記に於て、亦国璽に於て、「大日本帝国」たることは、一点の疑を容れさる処なり。
国と国との交際場裡に於て、自己の固有名詞を称する能はずして、綽名せられたる名詞〔Japan / Japon〕を以て甘んじて之を受くるか如きは、劣等なる小学生にして尚且つ之を忍びざる処なり。……独立せる帝国にして何故に自己固有の名詞を堂々と使用する能はざるや。何卒速かに世界に向て帝国国号の固有名詞の称呼使用を宣言し、小にしては速に外国郵便の「スタンプ」中の「ジヤパン」を「ニホン」又は「ニッポン」と改正せられむことを謹で請願仕候也。」

この何とも言い難い請願からTenno of Dai-Nippon-Teikokuへの道が始まったのであります。まぁ、成功しなかったのですがね。

2009年07月19日 (日)

今日のお題:課題報告部会「死と看取りの社会学:その問題圏」(第56会東北社会学会大会、於仙台・東北学院大学)

課題報告部会 「死と看取りの社会学:その問題圏」
(司会 東北大学 徳川直人、東京大学 田代志門)

1.爽秋会岡部医院 岡部 健
看取りを支える社会を創る ―在宅緩和ケアの現場から―

2.爽秋会岡部医院 相澤 出
在宅ホスピスケアという選択 ―看取りの現場の経験談が示唆するもの―

3.東洋大学 原山 哲
「看取り」の二つのパラダイム ―個の身体と生の贈与―

コメンテーター
東京大学 山崎浩司
岩手県立大学 庄司知恵子

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2009年07月18日 (土)

今日のお題:日本思想史研究会7月例会「西村玲著『近世仏教思想の独創――僧侶普寂の思想と実践』合同批評会」(於仙台市・東北大学文学部)

Amazon.co.jp: 近世仏教思想の独創 僧侶普寂の思想と実践: 西村 玲: 本

異端の学僧か、近代仏教思想の源泉か―江戸の中期、律僧普寂は富永仲基に代表される科学的合理主義といかに対峙したか。仏教堕落史観や政治思想中心主義を超えて、近世から近代に連なる新たな思想史の構築を目指す俊英の力作論考。(『近世仏教思想の独創』帯より)

○メインパネリスト(著者) 西村玲氏(東方研究会研究員)

○パネリスト(指定討論者)
  伊久間洋光氏(東北大学文学研究科博士後期課程)
  碧海寿広氏(国際宗教研究所研究員)
  三後明日香氏(米国・カールトン大学助教授)

○総合司会
クラウタウ,オリオン氏(東北大学文学研究科博士後期課程)

○コーディネータ
桐原健真氏(東北大学助教)

○共催
2009年度科学研究費・若手研究(B):「帝国」概念の思想史的研究(桐原健真代表)

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2009年06月27日 (土)

今日のお題:桐原健真「幕末における『帝国』」(第166回 幕末史研究会、於武蔵野市・武蔵野商工会館)

第166回 幕末史研究会

日 時:   2009年6月27日(土)  午後2時?4時
会 場:   武蔵野商工会館4階(吉祥寺駅中央口徒歩5分)
テーマ:   シンポジウム全体テーマ「幕末人の世界観」
       岩下哲典氏「幕末に至るナポレオン観の系譜」
       桐原健真氏「幕末における『帝国』」
       塚越俊志氏「幕末遣外使節のアジア観」
       佐野真由子氏「筒井政憲と異国」

発表内容:
今回は4人の研究者が「幕末人の世界観」というテーマに沿って、それぞれの研究成果を報告し合い、会場からもご意見やご質問を受けながら、幕末を生きた日本人の世界観を俯瞰するシンポジウムとしたいと思います。報告時間や質問時間はタイトになりますが、これだけの内容が一気に学べる機会は少ないと思います。ぜひ、お誘い合わせの上、ご参加下さい。(岩下記)

2009年06月15日 (月)

今日のお題:桐原健真『吉田松陰の思想と行動――幕末日本における自他認識の転回』東北大学出版会、2009年

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桐原健真『吉田松陰の思想と行動――幕末日本における自他認識の転回』東北大学出版会、2009年
単行本: 294ページ
出版社: 東北大学出版会 (2009/6/5)
ISBN-10: 4861631122
ISBN-13: 978-4861631122
発売日: 2009/6/5
Amazon.co.jp: 吉田松陰の思想と行動: 桐原 健真: 本

初の単著になります。

内容紹介:ペリー来航に始まる開国過程において日本が経験したことは、単に他者としての欧米やアジアに対する認識にとどまらず、「日本」という自己認識の転回であった。そしてその背後にはみずからの持つ思想的伝統に対する反省と読み替えが存在していた。この転形期を最も劇的に体現した吉田松陰の思想と行動を、没後150年目の今、まったく新たな視座から問い直す。彼の軌跡を追体験することは、また同様に一箇の転形期である今日の日本を逆照射することもなるであろう。

とまぁ、大上段に構えてみましたが、松陰だけで本ができるとは思いませんでしたよ。これもみなさまのおかげでございます。


2009年06月06日 (土)

今日のお題:「日中米の近代化と実業家」オープニングセレモニーに行ってきました

特別展「日中米の近代化と実業家」於渋沢史料館
http://www.shibusawa.or.jp/SH/200906ncb/index.html

会場 渋沢史料館 企画展示室
会期 2009年6月7日(日)? 2009年7月31日(金)
開館時間 10:00 ? 17:00(入館は 16:30 まで)

オープニングセレモニーの前に内覧致しましたが、日中米の三国からなかなかに面白い史料が集まっており、堪能しましたよ。

それにしても、史料館の錦絵に関する情報収集力はすごいねぇ、と思いました。敬三さんの遺産なんでしょうね。

2009年04月26日 (日)

今日のお題:『どう生き どう死ぬか――現場から考える死生学』(弓箭書院)に1.5章くらい書きました。

『どう生き どう死ぬか――現場から考える死生学』
監修 清水哲郎
編者 岡部健/竹之内裕文
体裁 四六判 292頁 並製
定価 2,000円+税
ISBN 978-4-900354-90-6
Amazon.co.jp: どう生き どう死ぬか―現場から考える死生学: 岡部 健/竹之内 裕文編他, 清水 哲郎: 本

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   目次

 序 どう生き、どう死ぬのか

1部 生と死の現場から 

 1章 在宅ホスピスの現場から   
 2章 看取りを支える、生を支える
 3章 最期の選択
 4章 教育現場における生と死 

2部 生と死の探究

 5章 死すべきものとして生きる 
 6章 死すべきものの仕事
 7章 遺された言葉  

3部 生と死の語り

 8章 ?あの世?はどこへ行ったか(後半半分) 
 9章 日本人の死生と自然 (全章)
 10章 死別の悲しみとそのかなた
 11章 受け継がれていく生

 終章 人生の終りをどう生きるか

 文献
 索引
 
 ―コラム紹介―
・病院の思想(←これを書きました)
・ホスピス・緩和ケア
・告知とインフォームド・コンセント
・安楽死
・QOL
・死のタブー化
・死を詠む
・虫のしらせ
・自然死
・スピリチュアル・ケア
・イエ永続の願い


2009年03月17日 (火)

今日のお題:尊王と攘夷――「水府の学」としての後期水戸学(東北大学・奈良女子大学合同研究会シンポジウム「日本の政治の形(かたち)――王権と政治権力をめぐって」2009年03月16?17日・於奈良女子大学文学部)

水戸藩校弘道館に祀られるのは、なぜ祖先神ではなく鹿島神なのか? 尊王と攘夷という位相を異にする政治イデオロギーを体現する存在として鹿島神を捉えたとき、「常陸国領主」としての水戸藩の歴史的・地政的自己認識が見えてくる。後期水戸学は、まさに水戸においてこそ成立する政治神学の体系だったのである。

――というような話をしました。それはそれとして、奈良女に行っての一つの収穫がこれです。

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奉安殿

まだ存在するんだね、奉安殿。ある意味歴史遺産です。

そのほか、奈良というものを実に堪能できたシンポでございました。日々感謝の心です。

2009年03月07日 (土)

今日のお題:陶徳民・姜克實・見城悌治・桐原健真編著『近代東アジアの経済倫理とその実践 渋沢栄一と張謇を中心に』・『東アジアにおける公益思想の変容 近世から近代へ』日本経済評論社、2009年

陶徳民・姜克實・見城悌治・桐原健真編『近代東アジアの経済倫理とその実践 渋沢栄一と張謇を中心に』日本経済評論社、2009年(定価3,800円+税)

$FILE1_l 第01部 倫理と思想
第01章 東アジア的価値観を有する近代産業の指導者(馬敏)
第02章 近代日中両国の「経営ナショナリズム」についての一考察(于臣)
第03章 渋沢栄一と張謇の実業思想についての比較(周見)
第04章 近代日中両国の企業家と官・商関係(中井英基)
第05章 渋沢栄一の経済倫理構想と徳育問題(沖田行司)
 第02部 社会と公益
第06章 張謇の社会事業と日本(呉偉明)
第07章 環境保護に対する張謇の功績について(張廷栖)
第08章 「中国女学堂」の設立から見る経元善の社会公益事業(石暁軍)
第09章 中日両国の近代文化事業における張謇と渋沢栄一の意義(銭健)
 第3部 文化と公益
第10章 渋沢栄一と『論語』(松川健二)
第11章 渋沢栄一による歴史人物評伝出版とその思想(見城悌治)
第12章 張謇と翰墨林印書局の翻訳・出版事業(鄒振環)

陶徳民・姜克實・見城悌治・桐原健真編『東アジアにおける公益思想の変容 近世から近代へ』日本経済評論社、2009年(定価3,800円+税)
$FILE2_l 第1部 歴史における公益思想の諸相
第01章 近世中国における儒教倫理と商人精神(余英時)
第02章 東アジアの救済施設としての社倉(陶徳民)
第03章 近世における経済道徳と慈善事業との関係(L・ロバーツ)
第04章 近世イギリスの社会公益事業(坂下史)
 第2部 近代日本における公益思想の変遷
第05章 近代日本社会の形成と儒学思想(姜克實)
第06章 「病院」の思想:幕末維新期における西洋社会事業観念の展開(桐原健真)
第07章 渋沢栄一にみる公益という名の慈善(山名敦子)
第08章 留岡幸助の慈善事業思想(室田保夫)
 第3部 近代中国の公益思想 
第09章 中国社会福祉史上における近代の始まり(夫馬進)
第10章 近代中国実業家の社会奉仕(朱英)
第11章 近代南通における社会保障システムの構築と張謇の役割について(趙明遠)
第12章 張謇・熊希齡にみる近代社会公益思想の展開(陳瑋芬)

当方の論文「「病院」の思想――幕末維新期における西洋社会事業観念の展開」は、2冊目に入っております(117?136頁)。1冊目は編集後記だけです。

2004年ごろから営々と続けてきた研究会がようやく実を結びました。近代日本を東アジアという枠組みの中に据えて検討したいという方にはおススメです。とくに、経済思想というか近代化論的には結構面白いです。

中国近代化において、仏教を中心とする宗教思想に期待する傾向がかなり存在したというのは、興味深い指摘です。

日本では西村茂樹が『日本道徳論』なんかで「世外教」(宗教)ではなく「世教」(哲学)でもって国民道徳をうち立てようとする近代化論を主張していたことを考えると、近代化における宗教の役割に関する日中比較とかやってみたくなりました。>やるんかい

まぁ、アタシの論文「病院の思想」も「どうして日本人は近代において宗教思想を軽視するようになったのか」というところから始まっているわけですから、そう遠くもないかと。

ちなみに、研究会のこれまでの軌跡はコチラ
  ↓
渋沢国際儒教研究チームHP
http://www.sal.tohoku.ac.jp/shibusawa/

いやホント、かなり喜びがございます。中国の方と遣り取りしなければならないというのに、中国語ができないという絶望的な状況にも関わらず、辞書を引き引き例文をコピペし続けたのも懐かしい思い出です。っていうか、大丈夫だったんだろうかあの文章。

日本経済評論社の方々には随分とご面倒をおかけいたしました。御礼申し上げます。>こんなところで言ってどうする

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