2009年03月07日 (土)

今日のお題:陶徳民・姜克實・見城悌治・桐原健真編著『近代東アジアの経済倫理とその実践 渋沢栄一と張謇を中心に』・『東アジアにおける公益思想の変容 近世から近代へ』日本経済評論社、2009年

陶徳民・姜克實・見城悌治・桐原健真編『近代東アジアの経済倫理とその実践 渋沢栄一と張謇を中心に』日本経済評論社、2009年(定価3,800円+税)

$FILE1_l 第01部 倫理と思想
第01章 東アジア的価値観を有する近代産業の指導者(馬敏)
第02章 近代日中両国の「経営ナショナリズム」についての一考察(于臣)
第03章 渋沢栄一と張謇の実業思想についての比較(周見)
第04章 近代日中両国の企業家と官・商関係(中井英基)
第05章 渋沢栄一の経済倫理構想と徳育問題(沖田行司)
 第02部 社会と公益
第06章 張謇の社会事業と日本(呉偉明)
第07章 環境保護に対する張謇の功績について(張廷栖)
第08章 「中国女学堂」の設立から見る経元善の社会公益事業(石暁軍)
第09章 中日両国の近代文化事業における張謇と渋沢栄一の意義(銭健)
 第3部 文化と公益
第10章 渋沢栄一と『論語』(松川健二)
第11章 渋沢栄一による歴史人物評伝出版とその思想(見城悌治)
第12章 張謇と翰墨林印書局の翻訳・出版事業(鄒振環)

陶徳民・姜克實・見城悌治・桐原健真編『東アジアにおける公益思想の変容 近世から近代へ』日本経済評論社、2009年(定価3,800円+税)
$FILE2_l 第1部 歴史における公益思想の諸相
第01章 近世中国における儒教倫理と商人精神(余英時)
第02章 東アジアの救済施設としての社倉(陶徳民)
第03章 近世における経済道徳と慈善事業との関係(L・ロバーツ)
第04章 近世イギリスの社会公益事業(坂下史)
 第2部 近代日本における公益思想の変遷
第05章 近代日本社会の形成と儒学思想(姜克實)
第06章 「病院」の思想:幕末維新期における西洋社会事業観念の展開(桐原健真)
第07章 渋沢栄一にみる公益という名の慈善(山名敦子)
第08章 留岡幸助の慈善事業思想(室田保夫)
 第3部 近代中国の公益思想 
第09章 中国社会福祉史上における近代の始まり(夫馬進)
第10章 近代中国実業家の社会奉仕(朱英)
第11章 近代南通における社会保障システムの構築と張謇の役割について(趙明遠)
第12章 張謇・熊希齡にみる近代社会公益思想の展開(陳瑋芬)

当方の論文「「病院」の思想――幕末維新期における西洋社会事業観念の展開」は、2冊目に入っております(117?136頁)。1冊目は編集後記だけです。

2004年ごろから営々と続けてきた研究会がようやく実を結びました。近代日本を東アジアという枠組みの中に据えて検討したいという方にはおススメです。とくに、経済思想というか近代化論的には結構面白いです。

中国近代化において、仏教を中心とする宗教思想に期待する傾向がかなり存在したというのは、興味深い指摘です。

日本では西村茂樹が『日本道徳論』なんかで「世外教」(宗教)ではなく「世教」(哲学)でもって国民道徳をうち立てようとする近代化論を主張していたことを考えると、近代化における宗教の役割に関する日中比較とかやってみたくなりました。>やるんかい

まぁ、アタシの論文「病院の思想」も「どうして日本人は近代において宗教思想を軽視するようになったのか」というところから始まっているわけですから、そう遠くもないかと。

ちなみに、研究会のこれまでの軌跡はコチラ
  ↓
渋沢国際儒教研究チームHP
http://www.sal.tohoku.ac.jp/shibusawa/

いやホント、かなり喜びがございます。中国の方と遣り取りしなければならないというのに、中国語ができないという絶望的な状況にも関わらず、辞書を引き引き例文をコピペし続けたのも懐かしい思い出です。っていうか、大丈夫だったんだろうかあの文章。

日本経済評論社の方々には随分とご面倒をおかけいたしました。御礼申し上げます。>こんなところで言ってどうする

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