薬用植物園の植物:夏

アマチャ

アマチャ

科名
ユキノシタ科
学名
Hydrangea macrophylla var. thunbergii Makino
生薬名
甘茶(あまちゃ)
薬用部位
葉・枝先
主要成分
作用
用途
甘味料、口内清涼剤

葉を収穫したのち発酵させると甘くなるので、お茶として飲んだり甘味料の原料となります。4月8日のお釈迦様の日に飲む甘茶もこれです。アジサイの仲間でもあり、生の葉には毒性があるので生のまま食べてはいけません。発酵させると毒性成分は分解されますが、濃く煎じて大量に飲むとやはり中毒するのでほどほどに。

イブキジャコウソウ

イブキジャコウソウ

科名
シソ科
学名
Thymus quinquecostatus Celak.
生薬名
百里香(ひゃくりこう)
薬用部位
主要成分
精油成分(モノテルペン)
作用
芳香健胃
用途
香辛料

葉の表面に蓄えられている精油成分の香りが強く、芳香健胃薬としてスパイスなどに用いられます。強い香りが100里先まで届きそうということをたとえて別名を百里香(ひゃくりこう)といいます。金城学院大学の漢方薬・薬草研究サークル「百里香」の名前はこの植物からもらいました。

ウイキョウ

ウイキョウ

科名
セリ科
学名
Foeniculum vulgare Mill.
生薬名
茴香(ういきょう)
薬用部位
果実
主要成分
精油(フェニルプロパン類)
作用
芳香健胃
用途
漢方薬(安中散)

花期は7〜8月にかけてで、セリ科の特徴で小さな花が傘状に集合して咲きます。薬用部位は小さな粒状の果実で、精油成分が多く含まれており、芳香健胃薬として用いられます。英語名のフェンネルというとご存じの方も多いでしょう。葉はアゲハチョウの幼虫の好物でよく食害に遭っています。

エビスグサ

エビスグサ

科名
マメ科
学名
Cassia obtusifolia L.
生薬名
決明子(けつめいし)
薬用部位
種子
主要成分
アントラキノン類
作用
緩下、整腸
用途
はぶ茶の代用品

7〜8月に花が咲き、直後から恵比寿様のひげのような形の豆(果実)をつけます。果実に詰まっている種を炒って濃く煎じると便秘の薬になります。とても生命力が強い植物。

カラスビシャク

カラスビシャク

科名
サトイモ科
学名
Pinellia ternata Breitenbach
生薬名
半夏(はんげ)
薬用部位
塊茎
主要成分
フェノール類
作用
鎮嘔
用途
漢方薬(半夏厚朴湯、小青竜湯など)

茶杓の形のがく(苞)に特徴のある花が咲きます。花は苞が筒状になっている部分の中に花穂の形で存在しています。塊状の地下茎が薬用部位で、上半身の水の循環の改善して吐き気やむくみを取る目的で漢方薬に配合されます。

キキョウ

キキョウ

科名
キキョウ科
学名
Platycodon grandiflorus A. DC.
生薬名
桔梗(ききょう)
薬用部位
主要成分
platycodin類
作用
鎮咳、去痰
用途
漢方(桔梗湯)

7月から8月にかけて釣鐘状の紫色の花を付けます。根を咳の薬に用います。のど飴などにも配合されていることがあります。

コガネバナ

コガネバナ

科名
シソ科
学名
Scutellaria baicalensis Georgi
生薬名
黄芩(おうごん)
薬用部位
主要成分
baicalin、wogonin
作用
消炎、解熱
用途
漢方薬(黄連解毒湯、小柴胡湯など)

7〜9月に紫色の花をつけます。シソ科に特徴的な唇状の花の形が観察しやすい花です。紫色の花なのに名前がコガネバナなのは根が鮮やかな黄色(=黄金の色)をしているから。生薬のオウゴン(黄芩)は炎症を抑える目的で漢方薬に配合されます。

ゴマ

ゴマ

科名
ゴマ科
学名
Sesamum indicum L.
生薬名
ゴマ油(ごまあぶら)
薬用部位
種子からえた油
主要成分
sesamine
作用
用途
軟膏基剤、食用

7月から8月に花期を迎えます。果実にはいわゆるゴマの粒がぎっしり詰まっています。種子を絞って得られるゴマ油は軟膏の基剤としても用いられます。

ザクロ

ザクロ

科名
ザクロ科
学名
Punica granatum L.D46
生薬名
石榴皮(ざくろひ)
薬用部位
樹皮、根皮
主要成分
作用
駆虫
用途
果実は食用

7月ごろから花が付き始めます。がくの部分の形は学生の間ではタコさんウインナーとのニックネームで人気。果実は11月頃にかけて登熟してきます。薬用部位は樹皮や根皮で消化管内の寄生虫の駆除に用いられます。

シロバナチョウセンアサガオ

シロバナチョウセンアサガオ

科名
ナス科
学名
Datura stramonium L.
生薬名
ダツラ(曼陀羅葉)(まんだらよう)
薬用部位
主要成分
atoropin
作用
中枢興奮
用途
副交感神経遮断薬、鎮痙薬、散瞳薬

7月〜8月に花が咲きます。「アサガオ」とはいうものの夕方花が開き、朝、日が高くなるとしぼむということを繰り返します。5つに切れ目の入った花はナス科の特徴です。ベラドンナと同様でアトロピンなどの強力な薬効成分を含み、根がゴボウに似ているため誤食による事故がしばしば起こります。副交感神経遮断薬として医療でよく用いられる重要な薬の原料となります。

センナ

センナ

科名
マメ科
学名
Cassia angustifolia Vahl.
生薬名
センナ、番瀉葉(ばんしゃよう)
薬用部位
小葉
主要成分
アントラキノン類
作用
瀉下
用途
下剤

8月ごろ花が咲く。薬用部分である葉の粉末や葉から抽出した薬効成分は便秘の治療薬として広く使われています。

トウガラシ(八つ房種)

トウガラシ(八つ房種)

科名
ナス科
学名
Capsicum annuum L. var. fasiculatum
生薬名
唐辛子(とうがらし)、蕃椒(ばんしょう)
薬用部位
果実
主要成分
capsaicin
作用
辛味健胃、皮膚引赤
用途
香辛料、健胃駆風薬

7月〜8月にナス科の典型的な形の花をつけます。花が咲いて1ヶ月ほどで果実が成熟しますが、「鷹の爪」として知られるトウガラシの果実は上向きです。(写真右)辛味が強く、辛味健胃薬として用いられる他、外用で皮膚表面の血行促進を目的に使われます。

トウガン

トウガン

科名
ウリ科
学名
Benincasa cerifera Savi
生薬名
冬瓜子(とうがし)
薬用部位
種子
主要成分
作用
消炎、利尿、緩下
用途
漢方(大黄牡丹皮湯)

夏休みの時期に花が咲き、9月〜10月にかけて成熟した果実(写真の右側)が食用にする「冬瓜」です。果皮が丈夫で冬まで保存ができるので「冬瓜」の名前がついたとされます。体に溜まっている水の代謝を良くする作用を目的に、種子を冬瓜子(とうがし)として用います。ニガウリ、ヘチマ、スイカなどウリ科の植物は、夏休みの時期にお互いによく似た黄色い花をつけています。

ハッカ

ハッカ

科名
シソ科
学名
Mentha arvensis L. var. piperascenes Malinvaud
生薬名
薄荷(はっか)
薬用部位
主要成分
l-menthol
作用
芳香健胃
用途
芳香清涼剤、漢方薬(加味逍遙散、防風通聖散)

メントールの香りを持つ植物で葉の表面に蓄えられています。小さな花が8月に葉の付け根につきます。シソ科の特徴で茎が真四角なので、薬草園に行ったら確かめてみてください。

ハトムギ

ハトムギ

科名
イネ科
学名
Coix lacryma-jobi L. var. ma-yuen Stapf
生薬名
薏苡仁(よくいにん)
薬用部位
種子
主要成分
作用
消炎、強壮
用途
漢方(麻杏薏甘湯、薏苡仁湯)

イネ科の植物の特徴で花弁がなく雄しべ雌しべだけの花をつけます。種子(写真右)を炒ってハトムギ茶にするあのハトムギです。種子の皮を取り除いた生薬がヨクイニンで、イボ取りの薬として用いられる他、抽出液を美容液などにもよく用いられています。

ミシマサイコ

ミシマサイコ

科名
セリ科
学名
Bupleurum falcatum L.
生薬名
柴胡(さいこ)
薬用部位
主要成分
saikosaponin類
作用
肝保護
用途
漢方(小柴胡湯、柴胡桂枝湯など)

8月に黄色い小ぶりな花が咲きます。生薬としては免疫力を高めるような作用があり、急性の病気が慢性化しそうなときに用いる漢方薬によく配合されます。

ムラサキ

ムラサキ

科名
ムラサキ科
学名
Lithospermum erythrorhizon Sieb. et Zucc.
生薬名
紫根(しこん)
薬用部位
主要成分
shikonin
作用
殺菌、抗炎症
用途
漢方(紫雲膏など)、染料

6月〜7月にかけて白い花が付きます。花が群れて咲くので「群ら咲き」→ムラサキと名前がついたとされています。根の色が紫色ですが、「紫」の色の名前はこの植物の根の色という意味でついたものです。炎症を抑え、傷跡の修復を早める作用があり、やけどの特効薬の紫雲膏の主薬でもあります。

薬用植物園の植物

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