私たちが毎日口にする食べ物は、どこで、どのようにつくられ、どんな人たちの手を経て食卓まで届いているのでしょうか。

2026年度、金城学院大学で開講された共通教育科目「プロジェクトJ〈農林水産省東海農政局連携〉」では、農林水産省東海農政局、トマト農家の飯田農園(名古屋市中川区)と連携し、学生たちが「食と農」の現場に飛び込みました。

講義を聞くだけではありません。農園を訪れて実際の農作業を体験し、生産者の目線でスーパーの売り場を調査。 そして、学科の異なる学生同士でチームを組み、「生産から商品販売」までをめぐる課題について考え、アイデアを形にして発表しました。 行政、生産者、大学が連携し、社会のリアルな課題を教材にする実践型の授業です。

「知っている」から「実感する」へ
授業はまず、東海農政局と飯田農園による講義からスタートしました。
日本の農業を取り巻く状況、食料自給率、輸出、食品ロス、農産物の生産・加工・販売を一体的に考える6次産業化など、普段の暮らしとも深く関わるテーマを学びます。
続いて学生たちは飯田農園を訪問。トマトが育つ現場を自分の目で見て、農作業も体験しました。

学生たちからは、「ニュースや教科書で学ぶよりも、食料自給率や食品ロスの問題をずっと身近に感じられた」「いつも食べている野菜が、生産する人たちの努力に支えられていることを実感した」といった声が寄せられています。

知識として知っていた「農業」や「食の課題」が、目の前にいる生産者や一つのトマトと結びつくことで、自分たちの暮らしにつながる問題へと変わっていきました。


学生たちは飯田農園を訪問。トマトが育つ現場を自分の目で見て、農作業も体験しました。

学年も、所属も専門も違う。だから見えてくるものがある。
現場で得た気づきを持ち帰った学生たちは、グループワークに取り組みました。
今回は、本学のさまざまな学部・学科の学生に加え、金城学院高校の生徒や同志社女子大学の学生も参加。学んでいる分野だけでなく、年齢や所属する学校も異なるメンバーが一緒に課題に向き合いました。

テーマとなったのは、飯田農園の商品をより魅力的に伝えるためのラベルデザインや、トマトジュースを搾った後に残る皮や種などの副産物の活用など。アイデアを出すだけではなく、「誰に届けるのか」「どのように商品の魅力を伝えるのか」「コストはどうするのか」といった、実際の商品化を意識した視点から検討を重ねました。


現場で得た気づきを持ち帰った学生たちは、グループワークに取り組みました。

ここで力を発揮したのが、それぞれが持つ異なる専門性や立場、経験です。デザインを学ぶ学生からは「どう見せれば手に取りたくなるか」という視点が、食を学ぶ学生からは食品としての活用方法が出てきます。 さらに、高校生や他大学の学生からも、それぞれの立場だからこその素朴な疑問や発想が加わり、議論が広がっていきました。

学生からは、「専門的な知識と、専門ではない立場からの視点を合わせることで、より魅力的なアイデアになった」「同じ大学生でも、学部・学科が違えば考え方がまったく違う。自分では思いつかなかった視点にたくさん出会えた」といった感想が聞かれました。

最初は互いに遠慮し、なかなか意見が出なかったグループも、農園での体験や話し合いを重ねるうちに少しずつ打ち解け、自由に意見を交わせるようになっていったといいます。異なる知識や価値観を持つ人と一緒に一つの答えをつくること。それ自体が、このプロジェクトの大切な学びでした。授業では、こうした経験を通じて発信力、表現力、協働力を高めることをめざしています。

ラベルデザインや、トマトジュースを搾った後に残る皮や種などの副産物の活用などを検討する。

社会を知ることが、自分の選択を変えていく。
授業を終えた学生たちの感想には、もう一つの変化が表れていました。「国産のものを意識して選びたい」「必要な分だけ購入して食品ロスを減らしたい」「食べ物をいただく時には、生産してくれた人への感謝も忘れたくない」。
農業の現状を学び、農園を訪れ、商品が消費者に届くまでを考えた経験が、普段の買い物や食生活を見つめ直すきっかけになっています。

金城学院大学が2026年度から教育の柱の一つとして掲げる「プロジェクト活動」。そこでは、教室で身につけた知識を社会の中で使い、異なる分野を学ぶ仲間や社会の人たちと協働しながら、答えの決まっていない課題に向き合います。
一つのトマトに触れるところから始まった学生たちの学びは、食と農、日本の社会、そして自分自身の暮らしへと広がっていきました。


飯田農園にて集合写真

知るだけで終わらない。体験し、考え、誰かと力を合わせ、自分たちなりの答えを社会へ届ける。
「プロジェクト科目」は、そんなこれからの大学の学びを体現しています。


本プロジェクトにご協力いただきました
農林水産省 東海農政局
2026年3月、金城学院大学と包括的連携協力に関する協定を締結。農林水産業や食に関する分野を中心に、双方の知見や資源を生かし、教育・研究活動などを通じた連携を進めています。

飯田農園
名古屋市中川区でトマトを生産。本プロジェクトでは、学生の農園見学・農作業体験を受け入れていただくとともに、生産者の立場から食と農の現場について学ぶ機会を提供いただきました。