大洞舞奈さん(林高弘研究室・卒業生)が取り組んだ研究「Gentamicinを用いた持続局所抗菌薬灌流において急性腎不全発症にかかわる血中薬物濃度のカットオフ値の検証」が、2025年11月、学術雑誌 ‘日本化学療法学会雑誌’ に掲載されました。

骨折して骨を金属で固定したり、人工関節を入れたりしたとき、もしくは血液中に細菌が入ったことが原因で起こる骨やその周りの組織の感染(骨軟部組織感染)では、血流の悪い骨や骨軟部組織に抗菌薬を十分に届けることが難しいとされています。近年、これに対する新しい治療法として、持続局所抗菌薬灌流(CLAP)が普及されつつあります。CLAPに用いる抗菌薬ではGentamicin(GM)が汎用されますが、GMを用いる際には、副作用の発現、特に急性腎不全の発症に注意を要します。これまでの治療において、急性腎不全発症を予測するために血中のGM濃度を測定することが有用とされてきました。しかしながら、CLAP時にGMを使用した際での血中GM濃度と急性腎不全発症の関係については明らかにされていませんでした。

今回、CLAP時にGMを使用した場合での急性腎不全発症を起こしうる血中GM濃度の境界値について検証を試みました。CLAP時にGMを使用した患者様を対象に調査したところ、急性腎不全の発症は血中GM濃度が2μg/mL以上で起こりやすいことを明らかにしました。本結果により、急性腎不全発症の予測には血中GM濃度の測定が有用であり、これを未然に防ぐためには血中GM濃度を2μg/mL未満に維持することが適切であると考察しました。

本研究は、岐阜県総合医療センター薬剤部との共同研究として実施したものであり、今後の整形外科領域でのCLAP治療の戦略に役立つことが期待されます。

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左より:林高弘教授、大洞舞奈さん(林高弘研究室 卒業生)

 


前列左より:牧田亮先生、大洞舞奈さん(林高弘研究室 卒業生)
後列左より:平下智之薬剤部長、前田里奈先生、大野裕之先生、井上壽江副薬剤部長