
薬学部 薬学科の5年生の鈴木真実さんが取り組んだ研究「Presence of itch qualities in mice」がBehavioural Pharmacology(2025年)に掲載されました。
ヒトにおいて、痒みは、単に”かゆい“というだけでなく、”ムズムズ“や”蚊に刺されたように痒み“など多くの表現型あること、アトピー性皮膚炎や急性蕁麻疹の患者で表現型が異なる場合があることなど、痒みの質に関して、近年報告されてきました。この痒みの質にそった痒みのコントロールは、患者のQOL(生活の質)の改善につながることが期待されています。その中で、言葉でコミュニケーションが取れない動物(本研究ではマウスを使用)の痒み反応(搔き動作)に痒み因子毎に何か違いがあるか本研究で調べたところ、搔き動作を起こす前に身震いやグルーミングなどの動作(前駆動作)を行う場合と行わない場合があることを見出しました。このように、マウスにおいても痒み反応に違いがあることがわかりました。アトピー性皮膚炎の痒みは、抗ヒスタミン薬が無効である場合が多いことは臨床でよく経験されることです。マウスにおいて、ヒスタミン誘発の痒み反応は、前駆行動がほとんど認められません。一方、自然発症アトピー性皮膚炎マウスモデルの痒み反応は、ヒトと同様に抗ヒスタミン薬では抑制されません。このマウスモデルの痒み反応は、ヒスタミン誘発の痒み反応と違い、前駆動作を伴う痒み反応を示す場合が多いことを明らかにしました。これらの結果は、動物にも痒みの質が存在し、その解析や制御は、難治性の痒みの新たな抑制薬の開発に有用な情報になると考えられます。
論文はhttps://journals.lww.com/behaviouralpharm/abstract/9900/presence_of_itch_qualities_in_mice.154.aspxからご覧いただけます。