左より安藤洋介講師(藤田医科大学医学部薬物治療情報学)、折戸花帆さん(6年生)、林高弘教授

大腸がんに対するがん化学療法に、トリフルリジン/チピラシル(TAS-102)という経口抗がん剤を用いた治療法があります。TAS-102の服薬スケジュールは、5日間連続で服用したのち2日間休薬し、これを2回繰り返し、その後に14日間休薬する『5投2休投与法』が標準とされています。しかし、この治療法を用いた際には免疫細胞の一種である好中球を著しく低下させる副作用(好中球減少症)の発現率の高いことが知られ、治療中はこの副作用の発現に対して特に注意を要します。これらの背景から、5 日間連続で服用したのち9日間休薬する『5投9休投与法』という新たなスケジュールが注目されており、先行研究では好中球減少症発生率が少ないという報告がなされました。しかし、これまでこの2つの投与法の違いを直接比較した研究結果はなく、その真偽は明らかにされていませんでした。

今回、TAS-102で治療した患者様を対象に重度の好中球減少症発現率を調べたところ、5投9休投与法:26.3%が5投2休投与法:40.2%よりも低いことを見出しました。さらに様々な要因の影響を除外した上で投与法の影響を検討することができる多変量解析という解析手法を用いた結果、重度の好中球減少症発現には投与法の違いが影響していることを明らかにしました。

 本研究は、藤田医科大学医学部薬物治療情報学および総合消化器外科学、藤田医科大学岡崎医療センター消化器外科、藤田医科大学ばんたね病院外科との共同研究として実施したものであり、今後の大腸がんでの治療戦略に役立つことが期待されます。

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