中尾優里さん(林高弘研究室 卒業生)が薬学部薬学科で卒業研究として取り組んだ研究「心不全に対するサクビトリルバルサルタンの治療中止に関する推算糸球体濾過量および収縮期血圧の影響」が、学術雑誌 ‘医療薬学’ に掲載されました。

日本における死因別死亡総数の順位では、心疾患による死亡は癌に次ぎ2番目に多いとされています。また近年では、高齢化に伴って心不全が増加し、「心不全パンデミック」が起こることが予測されています。サクビトリルバルサルタンは、2020年6月に新しい作用機序を有する心不全治療薬として承認を受けた後、多くの慢性心不全患者様に使用されるようになりました。そして現在、慢性心不全治療の中心となる医薬品の総称である『ファンタスティック4』の一つとして広く医療現場で使用されています。過去の研究報告において、サクビトリルバルサルタンの治療継続を妨げる要因として、治療開始時での低血圧や腎機能低下などが関係することが明らかとなりました。そして、最近実施された日本人を対象とした臨床研究では、腎機能の働きを表すeGFRという検査指標が30 mL/分/1.73㎡未満や収縮期血圧が100 mmHg未満の場合には治療中止に至る頻度が高いとの結果が示されました。そして、我々の実施した研究では、最近の研究結果よりも腎機能が良いeGFRが45 mL/分/1.73未満でも治療中止に至る場合があることを見出し、さらにこれは血清クロル値という検査指標が98 mEqよりも低い場合に起こりやすいことを明らかにしました。本研究は、岐阜県総合医療センター薬剤部との共同研究として実施したものであり、今後の慢性心不全治療に役立つことが期待されます。

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