向地琴音さん(林高弘研究室・卒業生)が取り組んだ研究「Comparing Injection Site Reactions of Aprepitant and Fosaprepitant in Gynecologic Cancer Chemotherapy」が、2024年9月、英文学術雑誌 ‘in vivo’ に掲載されました。
婦人科腫瘍に対するがん化学療法として、TC療法(パクリタキセルとカルボプラチンの併用療法)という治療法が用いられます。これら2種類の抗がん剤は3週間に1回点滴投与しますが、吐き気・嘔吐の発現頻度が高いため、制吐剤ガイドラインでは高度催吐性レジメンに準ずる制吐療法の使用が推奨されています。そのためNK-1受容体拮抗薬である経口薬のアプレピタント(APR)または注射薬のホスアプレピタント(Fos APR)が併用されます。APRは細胞表面にある化学受容器引き金帯(CTZ)や嘔吐中枢に作用する薬で、各種がん化学療法での吐き気・嘔吐症状の予防や治療に用いられます。一方、Fos APRはAPRの前駆体を主成分とする注射薬で、制吐剤として用いる際にはAPRまたはFos APRのいずれかを選択します。APRは3日間内服せねばならないのに対しFos APRは1回の点滴投与で良いとの特徴があると共に、両剤の効果は同等であることが知られています。最近、別の抗がん剤を用いた先行研究で、Fos APR併用群では点滴部位の発赤・腫脹・疼痛を伴う注射部位反応(ISR)がAPR併用群よりも起こりやすいことが報告されました。一方、さらに別の抗がん剤を用いた研究では、両剤のISRの発現頻度に差のないことが報告されました。
今回、婦人科腫瘍に対してTC療法を実施した際、制吐剤で用いたAPRとFos APRのISRの発現頻度に差があるか否かについて、VIPスコアという指標を用いた臨床試験を実施しました。試験の結果、Fos APRはAPRよりも婦人科腫瘍のTC療法に関連するISRのリスクを高める可能性があることを明らかにしました。
本研究は、藤田医科大学医学部薬物治療情報学および産婦人科学との共同研究として実施したものであり、今後の婦人科腫瘍での治療戦略に役立つことが期待されます。
論文はこちらから検索できます。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.