国際情報学部の授業「国際情報演習(1)・(2)」の受講生が、授業で学んだ米軍基地軍事環境汚染問題の研究のため、9/7 〜9の三日間現地を訪れ、地元関係者にヒアリング調査を行いました。

この問題は航空機泡消化剤として使用される物質PFASが、極めて有害で健康被害を引き起こす事から、沖縄で反対運動が繰り広げられています。PFASは土壌汚染から地下水に入り、水道水に流れ込んで、人体に蓄積され健康を蝕むことがわかっています。最近は全国各地でPFASによる水質汚染が発覚していることから、全国的にも危機感が広がっています。

今回の調査では、嘉手納町産業環境課の我謝治彦課長、宜野湾ちゅら水会の照屋正史会長、宜野湾市議会の宮城ちえ議員、沖縄平和運動センター山城博治顧問など基地問題に取り組む地元の人たちや、フォトジャーナリスト 久場 悟さん、ラジオ沖縄 小磯報道局長、杉原愛アナウンサー、沖縄テレビ 平良いずみアナウンサーなど、この問題を取り上げているマスコミ関係者からも意見を聞きました。また、一同は沖縄タイムスの垣花きらら記者から取材を受け、その記事が同紙に掲載されています。

*沖縄国際大学では米軍ヘリコプター墜落資料館を訪問 普天間基地を展望

       *米軍嘉手納基地で報道関係者からヒアリング

調査に参加した2年・井戸咲和伽さんは、「調査をするまで、この問題がどこか他人事のように感じており、自分は大丈夫だと思っていた。しかし、調査を終えてからPFASについての報道を気にするようになり、福島県の原発処理水海洋放出の問題と共通したものを感じた。この様に、今回学んだことが様々な問題に関連付け、自分ごととして捉えられて積極的な学びにつながった」と成果を総括しました。

また、2年・松田佑月さんは、「沖縄に行く前月、各務原市水道局の水源地で基準を上回るPFASが検出されたということを報道で知った。各務原市にも航空自衛隊岐阜基地があるので、この沖縄での問題が一気に身近な問題であると再認識することとなった。沖縄で多くの人に実際に話しを聞き考えさせられ、今後は自分ができることを探し、行動に移していくことが大事であると思っている」

同・佐藤和穂さんは「高校で沖縄の歴史を深く学ぶ機会があり、他の人よりは沖縄を知っていると思っていた。しかし、今回の視察で同じ日本の"水"という全ての人に身近なものに害があると知って、知らない情報が多いことを実感した。何事も情報を取り逃さないようにアンテナを張ることは重要で、身近にあるかどうか、実体験であるかどうかで、意識や行動がより変化することも分かった」

と今回の感想を述べています。

沖縄県の玉城デニー知事は9/18 に国連人権理事会に出席し国連欧州本部の環境汚染有害物質に関する報告者のマルコス・オレリャーナ氏と会い、この問題について議論し、22 日には声明を発表するなど、これらPFASを取り巻く問題は日本国内に留まらず、世界的に注目されています。

国際情報学部・磯野教授の指導による沖縄米軍基地環境汚染問題の研究は、この問題が顕著化する以前から取り組まれています。磯野教授は1978年に沖縄を訪問してからジャーナリストとして沖縄に関わり、PFASの問題は地元の研究者や水を管理する関係者からの情報、イギリス人ジャーナリスト、ジョン・ミッチェル氏の活動を聞いた事がきっかけとなり、爾来ゼミ生と共に研究を長年継続しています。
昨年は米軍キャンプ・フォスターに入り、この問題について米軍関係者と直接質問や意見交換をしました。また、ジョン・ミッチェル氏にはゼミ生が直接話を聞く機会がありました。さらに、フランス・ルモンド紙のメスメール・フィリップ記者の取材も受けるなど、一連の研究活動は海外のメディアからも注目されています。

これら研究の成果は、ゼミ生が毎年学会で報告を行い、今年は11/18に開催される情報文化学会全国大会で「沖縄米軍基地水質汚染問題の対策状況に関する一考察」として発表します。