式辞 学長 小室 尚子

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。保護者の皆さまにもお祝いを申し上げます。金城学院大学での皆さんの学生生活の上に、神の祝福が豊かにありますように、お祈しております。

金城学院は、134年の歴史を持つ学校です。大学は設立されて74年になります。その建学の精神は「福音主義(プロテスタント)キリスト教に基づく、女性への全人教育」です。創立以来134年間、この学校は、この建学の精神を受け継いで、教育が提供されてきました。皆さんは、大学案内を見てくださったと思いますが、この大学についてどのようなイメージをもたれたでしょう。キリスト教の精神とは、どういうことか。また「全人教育」とはどういう教育か、少しは理解していただけたでしょうか。

キリスト教は「愛」の宗教だとよく言われます。キリスト教の正典である『聖書』は、世界のすべての人々に向かって、「人」として「互いに愛し合いなさい」と教えます。先ほど読んでいただいた聖書の言葉にも「愛」という言葉が何度もでてきました。

ですが「互いに愛し合いなさい」と聞いても、心のうちでは、そんなことは所詮無理なことで、言っても虚しいことだ、と思う方々が多いのではないでしょうか。現に今、もう400日にも及ぶ戦時下にあって生活が破壊され、無惨に命が奪われ、多くの人々が悲劇の底に突き落とされる中、その人々は、自分や家族、国を守るために武器を取らざるをえなくなりました。こんな人間世界を見ていますと「愛すること」など、無理であるとしか思えません。

この3年間コロナ禍の中で、世界中の人々は命の大切さをどれだけ知らされたでしょうか。国境を越えて、民族の壁を越えて励まし合い、助けあって来ました。直接は知らなくても、感染した方々や、昼夜を通して献身的に働かれる医療に従事される方々を思いやってきたはずです。そのような人間世界の光と闇を見て、私達も内なる自分に向き合わざるを得ません。

一方で、皆さんはこのことを知っているでしょうか。「愛し合うこと」、これだけが「憎しみ」に対抗する方法なのです。それ以外に「憎しみの連鎖」を断ち切る方法はないのです。

では私たちは、互いに愛し合うためにどうすれば良いのでしょうか。「互いに愛し合う」根拠はどこにあるのでしょうか。

コロナ禍の中、2021年にオリンピックが開催されましたが、『オリンピック憲章』の中では、オリンピズムの根本原則は、「すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解しあうことを要求する」また「人間の尊厳を保つことを大切に考える平和な社会の確立を促進することにある」と言われています。また「互いに相手に敬意をはらうこと」「互いに歩み寄ること」とも言われます。オリンピック憲章で言われていることは、言うまでもなくオリンピックの時だけでなく、生活の全ての場面で言えることでしょう。なぜ人間には「尊厳」があり、それを互いに大切に考えなければいけないのか。「互いに歩み寄る」根拠は何なのか、そこを知っていなければ「互いに愛し合う」世界は成就しないでしょう。

実際、その祭典の裏で、大国と言われる国の指導者は、平然とその精神を踏みにじる事態を起こしました。昔と変わらぬ野蛮な方法で侵略戦争を始める準備がなされ、決断を下したのです。IT技術が進み、多くの情報が行き交う世界になっていますのに、そのようなことが平然と行われることに驚くばかりです。そこに生きている人の命の尊厳など全く構わない様相です。

一方、世界各国で反戦と平和を求める声が上げられています。人として肝心なことを見過ごしにしてはいけない。人として先ず心を向けるべきところは何なのかが叫ばれています。


『聖書』は、私たちの「尊厳」は、私たち一人ひとりがそれぞれに、命の創り主である神から与えられた命を持ち、神に愛されている者であるところにあると教えます。自分が生かされ、愛されているだけでなく、同じように周りのすべての人も、神に命が与えられて愛されている者なのだ、命の源である神が私たちを愛しておられるのだから、造られた私たちも互いに愛し合わなければいけない、と教えています。

オリンピック憲章には、「いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合う」ともあります。これは、世界的に人々が目を向け始めたSDGsの精神でもあります。この地球という星に共に生きる私たち、共に生きて行く上で肝心なことを見過ごしにしてはいけない。人として心を向けるべきところを忘れてはいけないのです。

SDGsの目標のひとつに「平和と公正をすべての人に」という目標があります。それは単に、17の目標のうちの一つということではなく、全ての達成すべき目標の基盤になることです。平和と公正があってこその16の目標です。そしてその平和は、人が互いに愛し合ってこそ達成できるのです。
皆さんは、18歳で、成人となりました。生き方に責任が問われることになります。自分で選択し、決断して行かなければなりません。

IT技術が目覚ましい勢いで発展し、AIの進化にも驚かされる毎日です。ともすればAIの判断こそが完璧な指標のように思わされたりもします。しかし決して忘れないでください。AIには人を愛する心はわかりません。人の悲しみに寄り添うこともできません。

皆さんには誰も侵すことのできない人としての尊厳が与えられているのです。どうか自分と隣人の尊厳を見失うことなく、そして目に見えることばかりに惑わされず、見えないことに目を注ぐ心のゆとりを大切にしてください。

プロテスタント・キリスト教を基盤にした建学の精神に立つ金城学院大学で、人間の尊厳を確認し、人間存在の真理を学んで、真の「愛」を実践する者として世界に出て行く準備をしてください。学生生活が充実したものとなりますように祈っています。式辞とさせていただきます。

 

在学生代表挨拶 学生会会長 岩田 ゆず

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私、国際情報学部国際情報学科グローバルスタディーズコース3年、岩田と申します。今年度も、こうして多くの新入生の皆さんを金城学院大学にお迎えできたことを心から嬉しく思います。今から、少しお時間をいただいて、皆さんに入学おめでとうの想いを伝えると共に、皆さんのこれからの大学生活への不安や心配を解消できるヒントをお伝えできたらと思います。

まずは皆さんの今の心境はいかがでしょうか。入学できて嬉しいという感情もあれば、不安だなという気持ちもあるかもしれません。たとえば、友達や時間割、就職活動など、いろいろあるかと思います。しかし、心配はいりません。金城学院大学は、皆さんの不安を解消する仕掛けがたくさんあります。一つずつ見ていきましょう。

たとえば、時間割。大学生になると時間割を自分で組むことをご存知でしょうか。もしご存知であれば、不安な方も多いかもしれませんが、心配はいりません。学科やコースの先輩や先生が、皆さんが困ったときは助けてくれますし、1年生の時は、学科の皆さんと一緒に時間割を組むオリエンテーションも準備されていますので、一人で悩む必要はありません。安心してください。ちなみに私も、1年生の頃は先輩と先生にたくさん頼って大学生活をスタートしました。また、私のように教員免許を取る方は、本部棟3階にある履修支援センターに行くこともお勧めします。資格に関することや、時間割を組む上で少しでも不安があれば、ぜひ相談してみてください。

次に進路についてお話しします。入学したばかりで、進路なんてと思う方もいるかもしれませんが、心配な方もいると思うので、金城学院大学のキャリア支援についてお話しいたします。もし、進路や就職活動などに悩んだときは、キャリア支援センターを頼ってみましょう。1年生から何でも相談できますし、就職活動の時期には、エントリーシートを一緒に作ったり、面接練習もしてもらうことができます。授業でもサポートがあります。それが1年生から始まる「キャリア開発」という授業です。自分の将来のヒントを見つける授業になると思います。

皆さんは「アドバイザーの先生」の存在をご存知ですか。高校まででいう担任の先生に近いのかもしれません。アドバイザーの先生とは、時間割や進路、留学などに迷ったときに相談できる自分担当の先生です。これから先生のお名前を教えてもらえると思いますので、不安があれば一緒に解決してもらいましょう。

最後はお友達についてもお話ししておきます。知らない人と仲良くできるか、大学生活に馴染めるかなどを心配していると思いますが、SNSなどで必死につながらなくても、実は簡単に友達はできます。なぜかというと、1年生は同じ学科の学生と一緒に受講する授業が多いからです。席が近くなった方とたくさんお話しをして仲を深めてみてください。

大学といえば「サークル」ですね。金城学院大学は、クラブ・サークル活動も活発です。サークルは全部で約60団体も存在しますので、積極的に参加して大学生活の輪を広げてください。サークルは絶対入らなくてはいけないものではありませんが、サークルでの経験は、就職活動でも自分が頑張ったこととしてお話しできますし、自分の「好き」や「可能性」を見つけるチャンスだと私は思います。クラブ・サークル説明会もありますので、自分にぴったりのサークルを探してみてください。

ここまでは、皆さんの心配を解消するようなお話しをしてきましたが、少し厳しいお話しもします。金城学院大学に限らず、大学は「自己責任の世界」でもあります。高校までと違い、課題や提出物を出し忘れていても、忠告してくれる人はいません。授業やアルバイト、サークルの兼ね合いを考え、自分で学習計画を立てて勉強する必要があります。そんな時に皆さんを手助けするのが、「K-PORT」と「manaba」です。特にK-PORTは大学全体の重要な連絡が入ります。こまめにチェックするようにしましょう。個人的には、大学内で使うメールアドレス、いわゆるK-mailアドレスにK-PORTの通知が届くように設定することをお勧めします。設定の方法がわからない方は先生などに聞いてみてください。

いろいろとお話しをしてきましたが、私から皆さんに一番伝えたいことは、「大学は自己実現の世界」、言い換えれば、「大学はやりたいことはなんでもできる場所」だということです。社会に出る前の限られた大切な時間を、自分の世界を広げることに使ってください。ちなみに私はこれまでの2年間で、ひとつも余すことなく、自分のやりたいことをすべて叶えてきました。これは胸を張って言えることです。金城学院大学は、きっと皆さんのやりたい事をサポートし続けてくれると思います。安心して、皆さんらしく大学生活を送っていただけたら幸いです。

最後のお話しに移ります。この「なんでもできる」の「なんでも」をサポートするのが、「金城学院大学 学生会」です。私は学生会の会長をしていますので、少しお話しをさせてください。学生会とは、中学校、高校でいう生徒会です。これまで皆さんは「生徒」と呼ばれてきましたが、大学では「学生」と呼ばれます。要するに、生徒会から学生会に呼び方が変わったということです。この大学には、クラブ・サークルを統括する「サークル協議会」や生協の「Lilium」など、私たちの学生生活を応援するたくさんの組織があります。そのすべてが学生会の中にあるというイメージを持っていただけると、大学の全体像が分かりやすいと思います。皆さんは、今日から学生会の一員です。大学のサービスを思う存分に使ってください。たとえば、学生会の活動は多岐に渡りますが、皆さんが一番興味を持ってもらえそうなものを厳選して紹介しますと、学生向けの講座やイベント開催などがあります。陶芸や、ラテアート、ホテルで行うテーブルマナーなどを、学生でも参加しやすい金額で開催しています。講座やイベントは基本的に日曜日もしくは長期休暇中の開催となりますので、こちらもぜひ参加してみてください。

これから、新入生の皆さんに重要なお知らせです。学生会には公式LINEが存在します。このLINEで流れる情報は、基本的にK-PORTやmanabaでは案内しない、学生会独自のサービスとなります。学生生活を楽しんでいただくためにも、新入生の皆さんにLINEを入れていただき、イベント詳細などをいち早く確認していただきたいと思います。学生会のお仕事は、「皆さんと大学の架け橋になること」だと思っていますので、その役割を果たすのに一番重要なのがこのLINEです。学生会として、そして一人の先輩として、少しでも皆さんのお役に立ちたいと願っていますので、目安箱に投函するような気軽な気持ちで、日々の困ったことなどもメッセージで送ってください。LINEの登録は、5月ごろに学内ポスターのQRコードでご案内します。ぜひ、お友達登録をお願いいたします。

お話しに最後までお付き合いいただきありがとうございました。お話しいたしましたのは、学生会長 岩田ゆずです。ぜひ学内で見かけたら、気軽に声をかけてください。いつでも歓迎します。

皆さんのこれからの大学生活がかけがえのない素敵なものになるよう、心からお祈りいたしております。ありがとうございました。