夏休み中(8・9月)の植物
 
〜解説を見ていただくに当たっての注意〜
 *植物名は標準和名,学名,()内に科名の順で書かれています。
 *用部のあとのカッコ内は生薬名前です。
 *主要成分とはその植物を特徴づける成分のことです。一番多く含まれているという意味ではありません。
  また,薬効成分というわけではないこともあります。
 
ゴマ Sesamum indicum L.(ゴマ科)
用 部 : 種子
用 途 : 軟膏などの基剤,食用
主要成分: トリグリセリド  セサミンなどのリグナン類

セサミンをはじめとする抗酸化成分を多く含む油です。紫雲膏の軟膏基剤として用いられるなどするため,ゴマ油は日本薬局方にも収載されています。
キキョウ Platucodon grandiflorum A. DC.(キキョウ科)
用 部 : 根(桔梗根)
作 用 : 鎮咳去痰 排膿
主要成分: トリテルペンサポニン類

夏から秋にかけて花が咲きます。根に含まれるトリテルペンサポニン類が界面活性を持ち,痰を切ることで咳を鎮めるとされています。
キカラスウリ Trichosanthes kirilowii var. japonicum(ウリ科)
用 部 : 皮層を除いた根(栝楼根)
作 用 : 天花粉
主要成分: デンプン

盛夏の頃,花が咲き,秋になると黄色い果実を付けます。
根をおろしてよく水に晒して得られるデンプンが天花粉で,昭和30年代以前の生まれ方は子供の頃に湿疹・あせもの予防にとつけられたことがあるかと思います。
一方,水に晒していない根にはカラスリンという堕胎作用のあるペプチドが含まれています。
ヘチマ Luffa cylindrica L.(ウリ科)
用 部 : 茎汁(ヘチマ水)
作 用 : 保湿
主要成分: サポニン類

盛夏に花を咲かせ秋口から実を付けます。果実(糸瓜)の煮汁は鎮咳,利尿薬,果実の繊維(糸瓜絡)は清熱,解毒に用いられます。
ウイキョウ Foeniculum vulgare L.(セリ科)
用 部 : 果実(茴香)
作 用 : 芳香健胃 駆風薬
主要成分: 精油(アネトール,アニスアルデヒドなど)

果実はフェンネルの名前でもおなじみかと思います。エスニックな独特の香りがします。漢方薬や民間薬の健胃薬によく配合されます。アゲハチョウの幼虫の食害によく遭います。
ミシマサイコ Bupleurum falcatum L.(セリ科)
用 部 : 根(柴胡)
作 用 : 抗炎症 利胆 肝機能改善
主要成分: サイコサポニン類

派手さはありませんが,可憐な花を咲かせます。柴胡は肝炎治療に多用される小柴胡湯や,病気をこじらせたときに使われる柴胡桂枝湯などの柴胡剤の主薬で,漢方で広く使われます。静岡県三島地方のサイコが上等品ということでこの名前がついたそうです。
ハブソウ Cassia occidentalis L.(マメ科)
用 部 : 種子(望江南)
作 用 : 緩下
主要成分: アントラキノン類

はぶ茶はこの種子のお茶です。うすく煎じると整腸作用があります。
羽状複葉の小葉の葉先が尖っていて,マメのさや(豆果)が芋虫のような形をしています。
エビスグサ Cassia obtusifolia L.(マメ科)
用 部 : 種子(決明子)
作 用 : 緩下
主要成分: アントラキノン類

丈夫で育てやすいので,はぶ茶の代用品に使われます。羽状複葉の小葉の葉先が丸いところでハブソウと区別できます。豆のさやが戎様のヒゲのような形をしてるところがエビスグサの名前の由来です。整腸作用,緩下作用があるので,ダイエット茶として売っていることあります。肝機能も改善してかすみ目がすっきりするということで,「決明子」という名前がついています。
センナ Cassia angustifolia Vahl.(マメ科)
用 部 : 葉(センナ・蕃瀉葉)
作 用 : 下剤
主要成分: アントラキノン類

エビスグサやハブソウに比べるとはるかに下剤としての作用が強い植物です。葉は医薬品として使います。食品に混ぜてはいけません。複葉の葉柄・葉軸の部分は葉の一部ですが,食品業者がこの部分を茎と間違えて健康食品として売られることがよくあり,下痢などの健康被害の報告が後を絶ちません。部位を正しく判別して利用することが大切な植物です。
写真は全て本学薬用植物園で撮影したものです。
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