夏の植物
 
〜解説を見ていただくに当たっての注意〜
 *植物名は標準和名,学名,()内に科名の順で書かれています。
 *用部のあとのカッコ内は生薬名前です。
 *主要成分とはその植物を特徴づける成分のことです。一番多く含まれているという意味ではありません。
  また,薬効成分というわけではないこともあります。
 
イブキジャコウソウ Thymus quinquecostatus Celak.(シソ科)
用 部 : 全草(百里香=ひゃくりこう)
作 用 : 芳香剤,発汗
主要成分: p-シメン,チモールなどの精油成分

6月中旬,うす紫の花を絨毯のように咲かせます。イブキは岐阜・滋賀県境の伊吹山からもらった名前。 タチジャコウソウは上に向かって伸びますが,イブキジャコウソウはほふく性で,地面を敷き詰めるように伸びます。香りが強く,百里先まで香ることから「百里香」の名前がついています。

!!「百里香」は「ひゃくりこう」と読みます!!
金城学院大の薬草サークル「百里香」の名前はこの植物からもらっています。名古屋の人はすぐ「ユリカ」と読みますが,決してユリカではありません!
ハッカ  Mentha arvensis L.(シソ科)
用 部 : 地上部(薄荷)
作 用 : 鎮静 清涼 芳香健胃 血管拡張
主要成分: メントールなどの精油

葉の表面に精油を貯める組織があり,葉を撫でるとスーッとするメントールの独特の香りがします。地下茎でどんどん増えます。
スペインカンゾウ Glycyrrhiza glabra L.(マメ科)
用 部 : ストロン(甘草)
作 用 : 抗炎症 甘味料
主要成分: グリチルリチン(グリチルレチン酸)

地下の走行茎(=ストロン)が薬用部位で文字通り甘味を持ちます。
薬理作用があり,甘味もあるので多くの漢方処方に矯味の目的も兼ねて配合されています。
過剰摂取には注意が必要で,漢方薬を複数服用するときは,カンゾウの総量に注意が必要です。
ムラサキ Lithospermum erythrorhyzon  Sieb.(ムラサキ科)
用 部 : 根(紫根)
作 用 : 抗炎症 抗菌
主要成分: シコニン

根の色が紫色をしており,「紫」の語源となった植物です。花が群れて咲くので「群ら咲き=ムラサキ」の名前がついたとされています。紫色の色素のシコニンに抗炎症作用,抗菌作用があり,紫根は漢方の軟膏「紫雲膏」の主薬でもあります。
ジャガイモ Solanum tuberosum L.(ナス科)
用 部 : 塊茎
用 途 : 賦形剤,食品
主要成分: デンプン

いわゆるイモの部分から得られるデンプンが,散剤などの賦形剤に用いられるので,バレイショデンプンの名前で日本薬局方に収載されています。イモの部分は地下茎の先端が塊状になったもので,根ではなく「茎」ということになります。
ナツメ Zizyphus jujuba var. inermis.(クロウメモドキ科)
用 部 : 果実(大棗)
作 用 : 強壮 利尿
主要成分: トリテルペン酸 サポニン類

体力を補う薬として漢方薬に配合されます。
6月末頃に,直径2-3 mmのよくよく見ないとわからないくらいの小さな花を咲かせます。9月下旬ごろになると直径2-3 cmの果実を付けます。(秋のページ参照)
ワタ Gossypium herbaceum L.(アオイ科)
用 部 : 種子の毛(綿花),種子(綿実)
作 用 : 綿花:脱脂綿原料,綿実:催乳薬
主要成分: 綿花:セルロース,
      綿実:油脂

綿製品の原料となる植物です。秋になると果実がつき,種子のまわりにある毛が綿花,中にある種子が綿実です。種子の油は綿実油というものです。
オクラ  Hibiscus esculentus L.(アオイ科)
用 部 : 皮層を除いた根(栝楼根)
作 用 : 天花粉
主要成分: デンプン

アオイ科フヨウ属の植物で同属のフヨウ,ハイビスカスと似たような花が咲きます。
果実は夏野菜の代表格のひとつで,ネバネバのもとである多糖が滋養強壮によいとされています。
写真は全て本学薬用植物園で撮影したものです。
Copyright(c) 2006- Lab of Pharmacognosy, Kinjo Gakuin Univ. All rights reserved.