脂質栄養学の新方向とトピックス

脂質栄養学の新方向とトピックス

高齢者の薬の仕分けが始まっています。
内容 日本老年医学会と国立長寿医療研究センターは、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を公表し、パブリックオピニオンを求めていました。この案では、中止を考慮すべき薬物もしくは使用法(ストップ)と強く推奨される薬物もしくは使用法(スタート)に仕分けする案が提出されています。たとえばすべての糖尿病薬はストップに仕分けされています。しかし、脂質異常症に対してはスタチン(コレステロール低下剤)がスタートに分類されるなど、私たちの理解と異なっていました。そこで、添付のようなコメントを提出しました。
糖尿病にスタチンは禁忌
内容 スタチン(コレステロール低下剤)は糖尿病を新規発症させます。このことは添付文書にも書かれるようになりました。しかし一般に糖尿病発症というリスクよりも冠動脈心疾患予防というベネフィットが上回るとし、依然として糖尿病者に使われているようです。
私たちは2004年以降に発表されたスタチンのRCT(randomized controlled study)に基づき、「スタチンには有意な冠動脈心疾患予防効果が認められないこと、スタチンによる糖尿病発症のメカニズムが明らかにされてきたこと」に基づき、スタチンは糖尿病者に禁忌である、という緊急提言を公表しました。
I章 最新の脂質栄養を理解するための基礎
― ω(オメガ)バランスとは?
キーワード 飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)、リノール酸とα-リノレン酸
動物がつくる脂肪酸と植物が作る脂肪酸、必須脂肪酸
ω6(n‐6)系列とω3(n‐3)系列
リノール酸-アラキドン酸カスケードとホルモン様物質(エイコサノイド)
脂肪酸代謝から見た食物連鎖
食事脂肪酸による遺伝子発現の調節
特殊なω3系食用油、シソ(エゴマ)油、亜麻仁(フラックス)油、チア油
食用油の微量因子が、もう一つの鍵
参考文献 奥山・国枝・市川、油の正しい選び方、摂り方、農文協、2008年
II章 ニューヨークのレストランから排除されたトランス脂肪酸
― トランス脂肪酸(水素添加植物油)の何が悪い?
内容
  1. "トランス脂肪酸"とはどんなもの?
  2. トランス脂肪酸はどのような食品に多く含まれているか?
  3. 健康に対する影響は?
    必須脂肪酸代謝ヘの障害はたいしたことはない
    心臓病の危険因子としては疑問
    炎症マーカーへの影響も疑問
    認知障害、その他への影響も明確ではない
    疫学調査の問題点
  4. 水素添加植物油、数種の食用油は脳卒中を促進し、寿命を短縮する-動物実験
  5. トランス脂肪酸以外の有害因子としてジヒドロ型ビタミンK1(水素添加ビタミンK1)
  6. ビタミンKの過剰は発癌を促進する-母乳児の頭蓋内出血との関連
  7. 水素添加植物油に内分泌撹乱作用がある
  8. 代わりの油、パーム(オレイン)油、オリーブ油は危険
  9. 動物性脂肪の方がまし
  10. 欧米に比べ、日本でトランス脂肪酸に対する対応が遅れているのはなぜ?
  11. 直面する課題-おわりに
参考文献 奥山治美、山田和代、宮澤大介、安井裕子
脂質栄養学 2007; 16(1):49-62
III章 動脈硬化のコレステロール仮説(神話)の崩落
― ωバランスが鍵
内容
  1. コレステロール仮説(神話)とは?
  2. コレステロールを多く摂取しても血清コレステロール値は上がらない!
  3. 動物性脂肪とコレステロールを減らし植物油を増やしても、血清コレステロール値は下がらない!
  4. 解釈を誤らせた落とし穴
  5. これまでの栄養指針はむしろ危険!
  6. 血清コレステロール値が高いと心臓病になりやすいか?
  7. 二つ目の落とし穴
  8. 高コレステロール値は、癌死亡率、総死亡率が低いことの指標であった!
  9. コレステロールの善玉、悪玉説を考える
  10. 動脈硬化―コレステロール対ω6/ω3バランス
  11. 迷走する米国コレステロール学派(マフィア)
  12. フランス、イスラエル、インド、沖縄でみられるパラドックス
参考文献 Okuyama H et al., Prevention of Coronary Heart Disease-from the cholesterol hypothesis to ω6/ω3 balance, S.Karger AG, Basel, 2007
奥山治美ら、心疾患予防ーコレステロール仮説から脂肪酸のω6/ω3バランスへ、学会センター関西(コネット アカデミック プラザ)、2002年
IV章 増えているアレルギー、炎症性の病気
― 抗アレルギー薬の9割は、リノール酸カスケードを抑制
内容
  1. アレルギーが起こるしくみと脂肪酸の摂りかた
  2. 食事を楽しみながら体質改善
  3. 喘息にも効果的なシソ(エゴマ)油食
  4. 肺炎もアレルギー性―高まる死亡率を抑えるには
参考文献 奥山治美、薬でなおらない成人病(生活習慣病)、黎明書房、1999年
V章 癌を予防する油脂(あぶら)の選び方
キーワード リノール酸系で促進され、α-リノレン酸系で抑制される癌(肺癌、肺腺癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、皮膚癌、食道癌など)
炎症が続くと癌になりやすい(持続性炎症)
リノール酸カスケードと癌
癌の環境因子・個人因子
癌の脂質性因子I、II、III
食べ物の選択による癌予防
参考文献 奥山・国枝・市川、油の正しい選び方、摂り方、農文協、2008年
準備中
VI章 うつ病、行動異常が増えている
― 脳を襲う油
キーワード 精神神経症、統合失調症、うつ病、出産時うつ病、ADHD(集中力欠如ー多動)、殺人、自殺、不慮死、沖縄パラドックス、行動異常
参考文献 シンポジウム抄録集(1)、(2)
VII章 数種の食用油、水添植物油に含まれる微量で有害な因子
― 食用としての安全性が確立していない油
キーワード 臓器障害、内分泌撹乱作用、環境ホルモン作用、ダイオキシン
準備中
VIII章  危険なサプリ
内容
  1. アラキドン酸を含むサプリと脳機能
  2. アラキドン酸補給の安全性の評価
  3. アラキドン酸を増やしても、血栓性は上がらないとするネルソンらの研究
    血小板凝集能の測定には、厳密な実験条件の設定が必要
  4. アラキドン酸カスケードの亢進が、多くの病気を増やしている
    アラキドン酸が発癌を促進することを示す臨床試験の結果
  5. アラキドン酸/DHA比が1であればよいのではないか?
  6. 炎症性疾患とアラキドン酸カスケード

【結論】
 アラキドン酸とDHAを1:1の割合で含むサプリメントを、0.1g/日のレベルで補給することは、癌を始め、下表に示す多くの疾患を促進することが基礎的/臨床的に示されており、現在の食環境では極めて危険である。長期投与の安全性の評価が動物実験でさえもなされないままに販売されていることは、倫理的にも問題がある。

【付録】亡霊を見た

IX章 糖尿病とメタボリック シンドローム
― カロリー制限だけでは予防できない糖尿病
キーワード 糖尿病(Ⅱ型)、インスリン抵抗性、血圧、BMI、肥満、グルコース利用率、シソ油・エゴマ油、魚油、メタボリック シンドローム、貯蔵脂肪、脂肪組織、
蓄積しやすい脂肪酸と蓄積しにくい脂肪酸
参考文献 奥山・国枝・市川、油の正しい選び方、摂り方、農文協、2008年
準備中
X章 健康増進を目指した油脂(あぶら)食品の新しい選び方
内容
  1. コレステロールを多く食べても、長期的には血清コレステロール値を上げない。
  2. 血清コレステロール値の高い群はむしろ癌死亡率が低く、長生き。
  3. リノール酸(ω6)系油脂の摂取を減らす。リノール酸の必須量は1エネルギー%以下、十分量は3エネルギー%、現在の摂取量は6エネルギー%。これを半分に減らすことをめざす。
  4. ω3系油脂(魚油、シソ油、エゴマ油、フラックス油)の摂取を増やす。
  5. 脂肪酸組成に関わらず、微量有害因子を含む植物油、水添植物油を避ける。(Ⅱ章参照)
  6. 動物性脂肪は比較的安全。肥満にならない程度に。マーガリンよりバターへ(Ⅱ章参照)
  7. 糖尿病予防のためには上記項目を守る。さらに、生活習慣のほか、糖質、タンパク質、脂質を含めたエネルギーバランスを改善する。
XI章 性差と脂質栄養
内容
  1. 女性のホルモン補充療法―2年で中断した大規模臨床試験
  2. 女性のコレステロール値とスタチン療法